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2017年7月15日
浅間山荘から四五年─シンポジウム 連合赤軍とは何だったのか

シンポジウムは、会場が一杯になる多数の参加を得て開催されました。
参加者は、主催者とゲスト20名を併せて約180名、せっかくお越しいただいたにも関わらず入場できなかった方には深くお詫びいたします。
はじめて参加したという若い人たちも多く、連合赤軍事件は現代史を考える上で避けることのできないテーマであり続けていることを示しました。
なお、シンポジウムの内容を収録した『証言』を、できるだけ早く発行いたします。

立錐の余地ない盛況─幅広い世代の参加を得て集中した討論

 第一部では、冒頭、司会が今年はロシア革命100周年であることを指摘し、白井聡氏に連合赤軍との関連を問いました。
 白井氏は「連合赤軍と関連はあるといえばある。1930年代、スターリンの進めた粛清の中で、ブハーリンは自己の非を認めて自己批判したが銃殺されてしまった。日本でも1926年、福本和夫の唱えた福本イズムが偏狭な異論排除の思想を主張し、日本の社会主義者の気風が変わった。連合赤軍はこのような思想の極限的な現れだ。」と指摘しました。
 鈴木邦男さんは自身が担った当時の民族派の運動のなかでも同様の問題が起きたことを示し、「三島由紀夫の事件がなければ同じようなことをやっていただろう。しかし、革命運動の中ではありがちなことで、失敗した革命だからたたかれている。」と語りました。
 青木理さんは、「政治運動は過激なほうが評価される。追われているものの焦燥感、暮らしていた閉鎖的な空間、リーダーの未熟さなどが引き起こしたと思うが、自分がそこにいたら逃れられるかわからない」と語りました。
 
 第二部では、後半なぜか司会の金さんが足立正生さんに司会を移譲。長話が危惧されていた足立さん、ところが鮮やかな采配ぶりを発揮しました。
 足立さんは、まず「今日の話では、一番大事なことが抜け落ちている。彼らは革命をしようとしていたのだ。これを忘れてはならない。」と強調。
 掛川正幸さんは、脚本を担当するに至った経緯を説明し、よく問題とされる「勇気がなかった」という最後のシーンの発言について「若松さんの要望で入れることになったが、『何に対して』の勇気かはっきりしない。『指導部に対するNO』の意味ならちょっと違うと思う」と発言。
 青島武さんは、「多くの監督が連合赤軍で映画を作ろうとしたが、できなかった。金集めをしたが集まらない。そこで『撮影が可能な脚本』を目指し、試行錯誤の後、映画作りで四苦八苦している自分たちの姿をそのまま入れ子状態に映画にしようということになった」と、「光の雨」が制作に至った裏話を披露。
 「勇気」発言については原淵勝仁さんも若松氏からの伝聞として、坂東が末弟から「もっと勇気があったら僕の兄ちゃんは死ななかったかな」と言われ、さすがに凹んだ、と言っていたと説明。
 ここで足立さんは「『勇気』が違う意味にされ、慙愧に堪えない」と述べ、「革命をやろうとする中で、悩むこと、わからないこと、疑問に思うこと、それを認めて引き受けることが『勇気』だと思う」と語りました。

 第三部では、まず桐野夏生さんが執筆に至った経緯を語りました。
 「編集部から提案があったが、のりきれなかった。今回、いろいろな人から話を聞く中で、救対を担っていた女性から『あの子たちは女性兵士ではない』といわれ、山で子供を産んで育てる壮大な計画があったことを知った。何か救いを見た気がして、書くテーマが定まった」と述べました。
 山本直樹さんは、「この人たちの書いた本が面白かった。誰か描かないかなと思ったが誰も書かない。それで自分で書くことになった。10年かがりの作品になり、やっと山荘の3日目になったが浅間山荘の終りまで書き終えたい」とふりかえりました。
 金井広秋さんは「事件の衝撃が大きく、何故だろう、と考えてきた。永田さんの本は評判が悪く、私も反発があった。しかし、『私生きてます』を読んで、この人は計算がない、責任を背負いぬいた人だと思って考えが変わった」と執筆を開始したいきさつを明かしました。
 これらの提起に応えて、当事者もそれぞれ当時考えていたこと、永田さんについての考え、総括や山から離脱したときの心情などを話しました。
 なお、桐野さんが司会に対して「性差別的なことは言わない方が良い。美醜についても。」とやんわり諌める一幕もありました。



プログラム

●構成
<第1部 戦後史の中の連合赤軍>
 白井聡(京都精華大学専任講師 日本思想史、政治史)
 鈴木邦男(一水会名誉顧問)
 青木理(ジャーナリスト)
<第2部 映画がとらえた連合赤軍>
 足立正生(「実録連合赤軍の最初のシナリオ執筆」)
 掛川正幸(「実録連合赤軍」決定稿シナリオ」)
 青島 武(シナリオライター。連合赤軍を描いた「光の雨」等多数)
 原渕勝仁(フリーTV番組制作者)
<第3部 作家が描いた連合赤軍>
 桐野夏生(作家。最新作は連合赤軍の女性を描いた『夜の谷を行く』)
 山本直樹(エロ漫画家。連合赤軍を詳細に追った『レッド』を連載中)
 金井広秋(慶応大学の紀要に「死者の軍隊」を連載。彩流社刊)
・司会 金 廣志、椎野礼仁
・当事者
 青砥幹夫(赤軍派)、岩田平治(革命左派)、植垣康博(赤軍派)、前澤虎義(革命左派)、雪野建作(革命左派)



参加の呼びかけ

 連合赤軍事件から45年の月日がたちました。
 余りにも早く若い生涯を終えねばならなかった仲間たちと、私たちが冥界で会いまみえる日もそう遠くないように思われてきた今日、連合赤軍とはなんであったのかについて、議論したいと思います。
 連合赤軍事件に対する世の中の関心は続いています。
 BS朝日により2時間枠の番組が制作され、好評を得て再放送もされました。
 桐野夏生さんの『夜の谷を行く』は、「山で子を産んで育てる」という革命左派の夢想的な思想をテーマとして書かれ、好評です。
 事件の異常さ、悲惨さをセンセーショナルに語るのではなく、その背景と思想を深く掘り下げようとする姿勢が見て取れます。
 5年前のシンポジウムでは、「当事者が語る」会として、さまざまな人たちの質問に答え、これまで考えていたことを語りました。
 今回は、より深く事件そのものの本質に迫りたいと思います。
 背景となった戦後の政治史のなかでの位置を振り返り、さらに、映画としてこの事件を表現した人々の思いを聞き、また、漫画や小説の形式でこの事件の本質を追求した作家たちの話に耳を傾けたいと思います。
  この事件のことを深く考え、教訓を後世に残さねばならないと考えている方々の参加を広く呼びかけます。
 2017年6月
                                            連合赤軍事件の全体像を残す会
・日時 2017年7月15日 13時〜16時半
・会場 渋谷ロフトナイン
・参加費 チケット代 ネット予約 1500円 当日売り 1800円 その他、飲食代